歴史

チェダーチーズを変えた夫婦と現代女性職人たち|伝統を受け継ぎ革新するチーズの物語

daichan

※本記事内のイラストは全てイメージです。

イギリスを代表するチーズ「チェダー」。その豊かな風味と熟成の奥深さで世界中の人々に親しまれていますが、現在のチェダーチーズの品質と製法の礎を築いたのは、19世紀に活躍したある夫婦でした。夫の名はジョセフ・ハーディング。そして彼の活動を影で支え、世界に広めるきっかけを作ったのが妻のジョセフィンです。

さらに近年では、伝統を守りながら新たなスタイルでチーズ作りに挑戦する現代の女性職人たちも注目されています。本記事では、ジョセフとジョセフィンの足跡をたどりながら、現代のチェダーチーズへとつながる“革新と継承”の物語をお届けします。


「チェダーチーズの父」ジョセフ・ハーディングの登場

19世紀初頭、サマセット州で酪農とチーズ作りに従事していたジョセフ・ハーディング(Joseph Harding)は、チェダーチーズの製造において画期的な改善をもたらしました。

彼が導入したのは、以下のような「衛生的かつ効率的」な製法:

  • 一定温度での加熱と撹拌による品質の安定化
  • 熟成前のカード(凝固物)の均一なカット
  • 記録の徹底による再現性の確保
  • チーズプレスと熟成環境の管理

彼の方式は「ハーディング・システム」と呼ばれ、現在の伝統的チェダーチーズ製造の礎となりました。その功績から、ジョセフは「近代チェダーチーズの父」と称されるようになります。


革命の影にいたもう一人の立役者、妻ジョセフィン

ジョセフの活動がサマセット州を越えて広がっていった背景には、妻ジョセフィンの存在があります。ジョセフィンは夫とともにチーズ製造を支えただけでなく、スイスやアメリカの生産者と交流し、ハーディング式の技術を海外に伝える重要な役割を果たしたとされています。

記録にはあまり残っていないものの、各地でジョセフィンが技術のデモンストレーションを行ったという証言もあり、彼女の存在は「伝統と技術の橋渡し役」として見直されつつあります。

夫婦で一緒にチーズを育て、文化として根付かせていった──その姿勢は、現代にも通じる「協働のあり方」と言えるでしょう。


現代に受け継がれる女性職人の革新

21世紀に入り、イギリス各地では再び「クラフトチーズ」が注目されるようになり、女性職人の活躍も増えています。その中でも象徴的な存在が**メアリー・クイック(Mary Quicke)**です。

彼女はイングランド南西部・デヴォン州にある家族経営のチーズ工房「Quicke’s Traditional」で、伝統的なチェダーチーズの製法を守りつつも、環境保護や動物福祉を取り入れたサステナブルな酪農に取り組んでいます。

また、

  • 品評会での数々の受賞
  • 女性酪農家ネットワークの形成
  • チーズツーリズムの推進

など、チーズを「文化」として広げる活動も積極的に行っています。まさに、ジョセフィンのスピリットを現代に蘇らせるような存在です。


チェダーチーズに見る「技術×文化×人」

チェダーチーズの歴史をたどると、それは単なる食品開発の話ではなく、「人」がつないできた文化の継承でもあります。ジョセフが技術を磨き、ジョセフィンが広げ、そしてメアリー・クイックのような女性たちが今なお進化させている。

どの時代にも共通しているのは、

  • 味に対する誠実なこだわり
  • 文化と土地への敬意
  • 家族や仲間との協働

こうした価値が、チェダーチーズという一つの塊に凝縮されています。


おわりに|一片のチーズから見える、人の物語

次にチェダーチーズを口にする時、ぜひ思い出してみてください。そこには数百年の歴史と、名もなき職人や女性たちの努力が詰まっています。

科学や技術だけでは語り尽くせない“手仕事の重み”と、時代を越えて受け継がれる“想い”。

チェダーチーズは、まさに「味わうべき歴史」です。

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年間1000Lの牛乳を消費している牛乳大好き家族の主。牛乳好きを増やす、牛乳嫌いを減らす、牛乳の有用性を広く伝える事を目的として活動中。
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