なぜインドではバッファローミルクが主流なのか?その理由を徹底解説!

世界で最も牛乳を消費する国の一つであるインド。しかし、インドで飲まれている「ミルク」の多くは、日本で一般的なホルスタイン種の牛乳ではなく、水牛(バッファロー)のミルクです。なぜインドではバッファローミルクの消費量が圧倒的に多いのか?その理由を、歴史的・文化的・栄養的な観点から詳しく解説します。
インドにおけるバッファローミルクの消費量の実態
インドは世界最大の乳製品生産国であり、牛乳の年間生産量は約2億トンに達しています。そのうち、約50〜60%がバッファローミルクとされています。
日本では牛乳といえば「乳牛(ホルスタイン種)」のものが一般的ですが、インドではむしろバッファローミルクの方が多く消費されています。では、なぜバッファローミルクがこれほどまでに主流なのでしょうか?
バッファローミルクが主流な理由
インドの気候に適している
インドの多くの地域は高温多湿な気候で、乳牛(ホルスタイン種)はこの環境に適応しにくい傾向があります。一方で、水牛は暑さや湿気に強く、飼育しやすいため、インドでは乳牛よりも水牛が多く飼育されています。
✅ 水牛の特性
- 高温多湿に強く、暑いインドでも生育可能
- 飼料の質が悪くても適応しやすい
- 病気に対する耐性が比較的高い
特に、北インドや西インドの農村部では、乳牛よりも水牛が一般的に飼われており、バッファローミルクの生産量が自然と多くなっています。
乳脂肪分が高く、インド料理に最適
バッファローミルクは、乳脂肪分が約6〜8%と高く、濃厚な味わいが特徴です。これに対し、一般的な牛乳(ホルスタイン種)は乳脂肪分が約3.5%程度と、比較的あっさりしています。
この高脂肪なバッファローミルクは、インドの伝統的な乳製品や料理に適しています。
✅ バッファローミルクが使われる代表的な乳製品
- ギー(Ghee):インド料理に欠かせない澄ましバター。バッファローミルクの脂肪分の高さがギー作りに適している。
- パニール(Paneer):インドのカッテージチーズ。バッファローミルクから作ると、コクが増して濃厚な味わいに。
- ダヒ(Dahi):インド版ヨーグルト。牛乳よりもクリーミーで濃厚な仕上がりになる。
- ラッシー(Lassi):インドの伝統的な飲むヨーグルト。バッファローミルクで作ると、よりリッチな口当たりになる。
特にギーやパニールは、インドのベジタリアン料理には欠かせない食材です。そのため、脂肪分が豊富なバッファローミルクが好まれるのです。
ヒンドゥー教の影響
インドではヒンドゥー教徒が人口の約80%を占めており、牛は神聖な動物とされています。そのため、牛を殺すことがタブー視される地域も多く、乳牛の飼育が制限されることがあります。
一方、水牛は宗教的な制約が少ないため、農村部を中心に広く飼育されています。これは、牛乳よりもバッファローミルクが多く流通する要因の一つとなっています。
保存性が高い
バッファローミルクは、タンパク質や脂肪分が多いため、腐りにくいという特性があります。インドのように冷蔵設備が整っていない地域では、この保存性の高さが大きな利点となります。
また、バッファローミルクは乳脂肪が高いため、加熱処理をすると自然にクリームが分離しやすく、保存性がさらに向上します。そのため、伝統的な方法で保存しやすく、農村部では長年にわたって愛用されてきました。

バッファローミルクの課題
バッファローミルクには多くの利点がありますが、一方で以下のような課題もあります。
搾乳量が少ない
水牛は、ホルスタイン種の乳牛に比べて1日に生産できるミルクの量が少ないため、大量生産には向いていません。一般的に、乳牛(ホルスタイン種)は1日に約25〜30リットルのミルクを出しますが、水牛は約10〜15リットル程度とされています。
そのため、生産効率を考えると、牛乳の方が供給しやすい面もあります。
味の好みが分かれる
バッファローミルクは非常に濃厚な味わいが特徴ですが、人によっては「くどすぎる」と感じることもあります。特に、牛乳に慣れている日本人にとっては、初めて飲むとその違いに驚くかもしれません。

まとめ
✅ インドでバッファローミルクが主流な理由
- 高温多湿なインドの気候に適している(水牛は暑さに強い)
- 乳脂肪分が高く、ギーやパニールなどのインド料理に最適
- ヒンドゥー教の影響で、牛よりも水牛が飼いやすい
- 保存性が高く、冷蔵設備がなくても管理しやすい
✅ 一方で、バッファローミルクの課題
- 乳牛に比べて搾乳量が少ない
- 味が濃厚すぎて好みが分かれることもある
インドの食文化と密接に関係するバッファローミルクは、単なる「牛乳の代用品」ではなく、インドの料理や宗教、気候に適した伝統的な食材です。もし機会があれば、バッファローミルクを使った本場のラッシーやパニールを試してみてはいかがでしょうか?