なぜヤギ乳は飲まれなくなったのか?牛乳との違いを徹底解説

「ヤギのミルクって飲めるの?」
そんなふうに思ったことはありませんか? 実はヤギ乳は古くから世界中で飲まれてきた歴史があり、今でもヨーロッパやアジアの一部では一般的な飲み物です。
しかし、日本ではほとんど見かけませんし、スーパーに行っても牛乳ばかりが並んでいます。
一体なぜヤギ乳は飲まれなくなったのでしょうか? その理由を、牛乳との違いも交えながら解説していきます。
ヤギ乳が飲まれなくなった理由
生産量が少ない
ヤギは牛に比べて体が小さく、1日に搾れるミルクの量もかなり少ないです。
- ホルスタイン牛(一般的な乳牛) → 1日約30L
- ヤギ(トカラヤギなど) → 1日約2〜3L
単純に考えても、牛1頭のミルクはヤギ10頭分以上に相当します。
このため、ヤギ乳は大量生産に向いておらず、価格が高くなりやすいのです。
独特の風味がある
ヤギ乳には「獣臭い」と感じる独特の風味があります。
これは、ヤギ乳に含まれる カプリル酸 や カプロン酸 という成分によるものです。
これらは「ヤギ(capra)」の名前がついているほど、ヤギ乳特有の成分なのです。
この風味は慣れればクセになるとも言われますが、日本人の多くはあまり好みません。
実際に「ヤギ乳は飲んだことがあるけど、苦手だった」という人も少なくありません。
牛乳が普及しすぎた
戦後、日本の学校給食に牛乳が導入されたこともあり、牛乳が圧倒的に普及しました。
さらに、大規模な酪農が発展し、価格が安く、手に入りやすい牛乳が主流となりました。
対してヤギ乳は一部の農家で細々と生産されていただけで、大量流通には至りませんでした。
現在でもスーパーで簡単に手に入らないのは、この歴史的な流れが影響しています。
加工が難しい
牛乳と違い、ヤギ乳はバターやチーズの加工が難しいという特徴があります。
これは 脂肪球が小さく、分離しにくい ことが原因です。
このため、チーズの種類も限られ、大規模な乳製品産業を発展させにくいという課題があります。
ヤギ乳と牛乳の違い
栄養価の違い
ヤギ乳は牛乳と比べて 消化が良い と言われています。
これは タンパク質の構造 が影響しており、特に乳糖不耐症の人でも比較的飲みやすいとされています。
また、ヤギ乳は ビタミンAやカリウムが豊富 で、牛乳より栄養価が高い部分もあります。
ただし、カルシウム量は牛乳とほぼ同じで、極端に違いがあるわけではありません。
栄養成分 | ヤギ乳(100g) | 牛乳(100g) |
カルシウム | 100mg | 110mg |
タンパク質 | 3.0g | 3.3g |
脂質 | 4.0g | 3.8g |
ビタミンA | 100μg | 39μg |
乳糖 | 4.5g | 4.8g |

アレルギーの出にくさ
牛乳アレルギーの原因となる αS1カゼイン というタンパク質が、ヤギ乳にはほとんど含まれていません。
そのため、牛乳アレルギーの人でもヤギ乳なら飲める場合があります。
ただし、完全にアレルギーが出ないわけではないので、注意が必要です。
乳糖不耐症でも飲める?
ヤギ乳は牛乳より乳糖が少し少ないため、乳糖不耐症の人でも比較的飲みやすいとされています。
ただし、個人差があるので、少量ずつ試すのが無難です。
ヤギ乳はどこで買える?
日本では一般的なスーパーではほとんど見かけませんが、ネット通販や一部の牧場 で購入できます。
また、沖縄や鹿児島などヤギ乳文化が残る地域では、地元のスーパーや直売所で見かけることもあります。
ヤギ乳の加工品としては、「シェーブルチーズ」(フランスのヤギ乳チーズ)が比較的有名です。
輸入食材店やチーズ専門店では手に入ることがあります。
ヤギ乳の未来は?
近年、健康志向の高まりとともに ヤギ乳の栄養価 が注目されつつあります。
また、環境負荷の低い酪農 という観点でも、ヤギは牛より飼育に必要な資源が少ないため、持続可能な選択肢として期待されています。
今後、「ヤギ乳ブーム」が来る可能性もゼロではない でしょう。
ただし、日本の食文化や流通システムの影響もあり、すぐに一般的な飲み物になるのは難しいかもしれません。
まとめ
ヤギ乳が飲まれなくなった理由は、
- 生産量が少なく、大量生産が難しい
- 独特の風味があり、好みが分かれる
- 牛乳が普及しすぎている
- 加工が難しく、大規模産業向きではない
これを機に、ヤギ乳の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか?