ミルクの冒険物語 第2章「古代エジプトと牛乳の神秘!ピラミッド建設を支えたミルクの歴史」

ミルクは再び目を覚ました。
どこかひんやりとした空気を感じながら、そっと目を開く。そこに広がっていたのは、黄金色の砂漠だった。果てしなく続く砂の大地、青く澄み渡る空。そして、その中心にはそびえ立つ巨大な建造物——ピラミッド。
「ここは……?」
ミルクが呟くと、またしても頭の中に言葉が流れ込んできた。
「紀元前3000年。ここは古代エジプト——太陽神ラーを信仰し、ピラミッドを築いた偉大な文明の地である」
ミルクは息をのんだ。エジプト——あの神秘的な文明の時代に、自分は今いるのだ。
ふと、遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
「何かの儀式……?」
ミルクは音のする方へ向かった。そこには大勢の人々が集まっていた。男たちは腰に白い布を巻き、女性たちはカラフルな衣装をまとっている。中央には、大きな神殿のような建物があり、その前に並べられた供物の中に、ミルクは見覚えのあるものを見つけた。
「これは……牛乳?」
ミルクは驚いた。土器の壺にたっぷりと注がれた白い液体。それは明らかに牛乳だった。だが、ただの食べ物として置かれているわけではない。人々は壺の前で神妙な面持ちをしており、まるで神聖なものを捧げるかのようだった。
「もしかして……牛乳は神に捧げるものだったの?」
——その瞬間、背後から声がした。
「そうだ。我らの神々にとって、ミルクは聖なる液体なのだ」
ミルクは驚いて振り向いた。そこに立っていたのは、一人の僧侶のような男だった。長い白い衣をまとい、額には聖なるシンボルが刻まれている。
「神々に捧げる?」
ミルクが尋ねると、僧侶は静かに頷いた。
「我らが信じる女神、ハトホルは、母なる存在。彼女は聖なる牛の姿を持ち、その乳は神聖な恵みだ」
そう言って、僧侶は神殿の壁を指差した。ミルクはその壁画を見て、息をのんだ。

——そこには、大きな角を持つ女神が描かれていた。
「ハトホル——愛と豊穣の女神。彼女の乳は生命を育む聖なるものとして、崇められていた」
ミルクの頭の中に、またしても言葉が流れ込んできた。
「牛の姿の女神……それにミルクが関わっていたなんて!」
ミルクは驚きを隠せなかった。牛乳は単なる食べ物ではなく、神々と人々をつなぐ神聖なものだったのだ。
ピラミッド建設とミルク
その時、僧侶が別の場所へと案内するように手を差し伸べた。
「さあ、来るがよい。お前にも見せたいものがある」
ミルクは導かれるままについていった。

彼らが向かったのは、巨大な建築現場だった。数百人もの人々が、巨大な石を運び、積み上げている。その姿は壮観だった。だが、同時に信じられないほどの重労働だった。
「ピラミッド……!」
ミルクは圧倒された。あの壮大な建造物が、こんな風に人々の手によって作られていたのだ。
ふと、休憩中の労働者たちの方に目を向けると、何かを飲んでいるのが見えた。土器の壺を持ち、皆が次々と口をつけている。
「もしかして……牛乳?」
ミルクは駆け寄った。労働者の一人が、壺から白い液体をすくい上げ、ごくごくと飲んでいる。その表情は満足そうだった。
「牛乳を飲んで、力をつけているのか!」
その時、また僧侶が語りかけてきた。
「労働者たちは、神聖なる乳を飲むことで力を得るのだ。ミルクは彼らの命を支える」
「じゃあ、牛乳はただの食料じゃなくて、エネルギー源だったんだね!」
ミルクは感動した。牛乳は、神への捧げものとしてだけでなく、人々の労働を支える重要な栄養源だったのだ。
ミルクの祝福
その時、神殿の方から新たな儀式が始まる音が聞こえてきた。
「おお、ちょうど良い時に来た。これを見よ」
ミルクは僧侶に促され、再び神殿の前に戻った。
そこでは、牛乳をたっぷりと満たした壺が運ばれてきていた。それを神官が持ち上げ、神殿の入り口にそっと注いだ。白い液体が大地に染み込んでいく。
「神々よ、我らに豊穣を与えたまえ」
神官の祈りの言葉が響く。ミルクは、その光景に胸を打たれた。牛乳はただの飲み物ではない。それは、人々の生活を支え、神々とのつながりを築くものだったのだ。
「ミルクは、人間にとって特別な存在なんだ……」
ミルクは静かに誓った。自分はただの液体ではない。人々の歴史とともに歩んできた、大切な命の恵みなのだ。
——その時、ふわりと風が吹いた。
「また、次の時代へ行く時が来たのか……」
ミルクの体がゆっくりと光に包まれる。
「さあ、次はどんな時代へ——」
光の中へ溶け込むように、ミルクは新たな時代へと旅立っていった。
