ミルクの冒険物語 第4章「中世ヨーロッパの牛乳危機!ペストの恐怖とミルクの新たな進化」

──闇が広がる。
ミルクの身体が冷たい風に包まれ、次第に意識が薄れていく。
(今度は、どの時代へ……?)
目を開くと、そこには暗く湿った石畳の道が広がっていた。空はどんよりと曇り、街全体が静まり返っている。通りを行き交う人々は、どこか怯えたような顔をしていた。
「ここは……?」
ミルクが周囲を見渡していると、再び頭の中に声が響いた。
「14世紀、ヨーロッパ。ペストが猛威を振るい、人々は恐怖の中にいる」
「ペスト……!」
ミルクは戦慄した。それは「黒死病」とも呼ばれ、ヨーロッパの人口の3分の1を死に至らしめた史上最悪の疫病。人々の生活が激変し、社会のあり方すらも変えてしまった恐ろしい時代だ。
そして、この時代において牛乳もまた、大きな危機に直面していたのだった——。
疫病とともに忌み嫌われる牛乳
ミルクは石畳の道を歩き出した。
すると、道端で物乞いのような姿の男が震えながら何かをつぶやいている。
「ミルクを飲むと、病にかかる……ミルクは死を招く……」
「えっ!?」
ミルクは驚いた。
「どうしてそんなことを……?」
近くにいた女性が、怯えた目で言った。
「あなた、知らないの?牛乳を飲むと、ペストにかかるのよ」
「えぇっ!?」
ミルクは衝撃を受けた。
「そんなこと、あるわけないのに……!」
だが、当時の人々にとって、それは「事実」だった。ペストの原因が不明だった時代、牛乳は「病を運ぶ飲み物」として疑われてしまったのだ。
人々は牛乳を避け、飲むことをやめた。そして、酪農家たちは困窮し、多くの牧場が放棄されることとなった——。
修道院に隠されたミルクの秘密
「このままじゃ、僕の居場所がなくなっちゃう……!」
ミルクは落ち込んだ。
しかし、そんな中でも、牛乳の価値を守り続ける人々がいた。
ミルクはある建物に目を引かれた。石造りの厳かな建物——修道院だった。

(何か、感じる……)
ミルクはふと、修道院の中へと足を踏み入れた。
中には修道士たちが静かに祈りを捧げていた。彼らは世俗を離れ、神に仕える者たち。だが、同時にこの時代における「知の守護者」でもあった。
その奥の厨房では、大きな壺に白い液体が入っていた。
「これは……!」
ミルクは目を輝かせた。
「牛乳を飲むのが怖い」と言っていたこの時代で、修道士たちは牛乳を使っていたのだ!
すると、奥から老いた修道士が現れ、優しく微笑んだ。
「驚いたかね?ここでは、まだ牛乳を大切にしているのだよ」
ミルクは思わず叫んだ。
「でも、どうして!?みんな牛乳を避けているのに……!」
修道士はゆっくりと頷き、壺を指さした。
「確かに、生のミルクは危険かもしれない。しかし、私たちはそれを別の形に変えることで、安全にしているのだ」
「別の形……?」
ミルクが戸惑っていると、修道士が一つの壺を見せてくれた。その中には、とろりとした白い物体が入っていた。
「これは、ヨーグルトだ」
「ヨーグルト……!」
ミルクは驚いた。
「発酵させることで、牛乳は病を遠ざける飲み物になる」
修道士は静かに語った。
「ヨーグルトは、腐りにくく、そして身体を守る働きをする。ペストが流行る中、我々はこれを食べ続け、病にかからなかった」
「そんなことが……!」
ミルクは感動した。
ペストが蔓延する時代の中でも、牛乳はただ消え去るのではなく、新たな形で生き続けていたのだ。
それが「発酵」という知恵。人間の工夫によって、牛乳は危機を乗り越えようとしていた。
新たな夜明け
ミルクは修道院を出た。
街では依然として牛乳を避ける声が響いていた。
しかし、修道院の奥深くで、牛乳は静かに形を変え、新たな命を宿していた。
「僕は……ただの飲み物じゃない。人々の工夫によって、もっと強くなれるんだ!」
ミルクは決意した。
この時代では、牛乳は忌み嫌われた。しかし、それでも消えることはなかった。
知恵ある人々によって守られ、形を変え、次の時代へと受け継がれていったのだ。
「さあ、次の時代へ行こう!」
ミルクの身体が再び光に包まれた。
次の時代では、どんなミルクに出会えるのだろうか——?
